研究・活動の紹介

社会福祉士と歯科衛生士としての視点を融合した研究

 ALS患者が「病いとともにその人らしく生きるための支援」に関する研究を行い、身体的、心理的、社会的ニーズの変化に伴うアイデンティティの崩壊・再構築のプロセスとその関連要因について明らかにし、患者の主観的ニーズを重視した支援の研究と実践を行ってきました。一方、歯科疾患を有する患者の心理・社会的支援の研究は遅れています。
これからは歯科衛生士と社会福祉士の2つの知識や実践を活かして、歯科領域の疾患を有する患者の心理・社会的支援を構築し、普及させたいと考えています。

・ (1)口腔がん患者の心理社会的支援に関する研究

口腔がんは一般的ながんと同様の問題点とともに、特有の問題が生じます。口腔がんは手術後、摂食嚥下障害、構音障害などの口腔機能障害や顔貌の変形をきたします。また、放射線治療により唾液分泌の低下、味覚異常、口腔内乾燥感などの副作用が生じます。手術後の口腔機能障害による社会的変化や経済状況の変化が患者のQOLに影響しているといわれています。また、顔貌の変形などボディーイメージの変化が自己概念や自己尊重に影響します。
このように口腔がんは治癒後も心理・社会的な影響が大きく、アイデンティティが崩壊する可能性が高くなるいます。そのため、口腔がん患者の告知後から手術後までの心理社会的苦痛の変化および生活上の問題点を詳細に明らかにする研究を進めてきました。さらに、告知直後から継続的な心理・社会的支援を行うことで、アイデンティティの再構築に向けた支援を検討しています。

在宅医療助成勇美記念財団 2015年一般公募「在宅医療研究への助成」完了報告書
口腔がん患者への生活支援体制の構築―質的研究による心理社会的問題の明確化―

「口腔がん患者の心理社会的ニーズとQOL」『福祉社会科学』8号37-47,2017

・ (2)歯科領域の疾患を有する人の心理・社会的支援に関する研究

1)顎変形症患者の心理・社会的変化の過程
   顎変形症患者の病態認識や外科的矯正治療を決意し治療が終了するまでの心理・社会的変化のプロセスを質的研究により明らかにしました。
2)歯の変色が患者の心理に与える影響
   変色歯が患者心理に大きな影響をについて、特に、患者の心理的抑圧のプロセスを質的分析により検討しています。

研究業績:2014-88 2016-95

社会福祉士として

・ (1)病いとともにその人らしく生きるための支援の研究と実践

 自分の意思で身体を動かすことができなくなる進行性の難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の「病いとともにその人らしく生きるための支援」について研究しています。特に、病状告知、病状の進行などによる心理社会的苦痛、人工呼吸器装着の有無の選択による心理社会的苦痛を質的研究を中心として明確にしてきました。また、ALSの発症に伴うアイデンティティの崩壊と再構築のプロセスを、家族役割・社会役割をキーワードとして分析することで、専門職としての支援を検討してきました。さらに、研究での理論をベースとして、新潟大学医歯学総合病院の神経内科で確定診断を行うALS患者と家族の支援を、医療ソーシャルワーカーとして行ってきました。

 研究業績 
 2001-4.8.9 2001-4.5.7.8 2002-13.16.17.19.20 2003-24.26.27 2004-29.31.32 2005-34.35.36.37.39 2006-42 2010-61 2011-66 2012-71 2013-78 2014-86.87

・ (2)患者・家族・専門職の認識のズレに関する研究

 患者が求めている支援と家族や専門職が必要と考えている支援の<認識のズレ>を、体系的に捉える研究を行っています。<認識のズレ>が生じたままでは、患者・家族・専門職の信頼関係を構築することは困難となります。<認識のズレ>がなぜ生じるのか、<認識のズレ>からさらにどのような問題が生じ、どのように埋めていくことが可能なのかを検討してきました。
 患者・家族・専門職の間の<認識のズレ>は、<立場の違い><知識の違い><支援する時期と支援を受け入れる時期の違い>に分類できました。また、患者や家族は<現在の視点>で、専門職は<将来の視点>で考えるため、<病いや障害の捉え方の違い><問題把握の違い><情報の捉え方の違い>が生じていました。専門職として支援する場合、このような<認識のズレ>に配慮することで、「患者が真に求める支援」に繋ると考えています。

研究業績
2005-38 2006-40 2007-43 2008-46.48 2009-54 2014-89

・ (3)難病患者支援の地域づくりと患者会の支援

 NPO法人新潟難病支援ネットワークの理事として、新潟県難病相談支援センターの立ち上げから運営に関わってきました。主に新潟県難病相談支援センターの相談内容を分析することで難病をもつ人の心理社会的苦痛や支援体制の問題点を明らかにしたり、研修事業の企画・運営を行ってきました。研修事業では難病相談支援センターの事業の1つである「患者会の育成」を目的としたピアカウンセリング研修を担当してきました。また、患者会から要望があれば、各患者会の総会や交流会での講師を行いました。

研究業績
2007-45 2008-47 2009-52.53 2010-55.59

・ (4)認知症の人の支援の実態と支援困難感に関する研究

 地域包括支援センター職員の認知症の人への支援の実態と担当者が感じる支援困難感を明らかにし、認知症の人への効果的な支援活動の方法、地域における支援で今後整備すべき条件等を検討しています。

研究業績
2014-83 2015-93 2016-97

・ (5)介護予防に関する研究

 介護予防が目標とするのは、高齢になっても日常生活の自立度を維持することです。介護予防を勧めるうえで必要なハイリスク患者の把握するために、2001年2月、兵庫県宝塚市、加西市、宍粟郡一宮町の3市町において、2000年末の時点で65歳以上の住民を対象に全数調査を行いADLの低下要因を検討しました。

研究業績
2001-2.3.9.11 2002-14.15 2003-21.22.25

歯科衛生士として

・ (1)がん終末期・難病患者への口腔ケアの実践と研究(社会福祉士の視点から見た口腔ケアの意義)

 山口赤十字病院緩和ケア病棟(1998年2月~2000年2月)、淀川キリスト教病院緩和ケア病棟(2000年6月~2004年2月)、国立病院機構刀根山病院神経内科病棟(2003年7月から2004年2月)で口腔ケアのボランティアを行ってきました。緩和ケア病棟ではカンファレンスに参加することで多くのことを学び、淀川キリスト教病院では「がん終末期における口腔トラブルと食事のおいしさ・味覚異常との関連」について病棟看護師と一緒に研究しました。 また、山口赤十字病院では訪問看護師に同行し、要介護高齢者や障害児、がん終末期の方の口腔ケアを行ってきました。新潟大学医歯学総合病院の神経内科で医療ソーシャルワーカーとして関わった筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者には、歯科衛生士としての支援も行ってきました。
 重度疾患や重度障害をもつ人への社会福祉士と歯科衛生士の2つの資格を活かした支援を通して、幅広い口腔ケアの意義を知りました。
社会福祉の立場から支援を行うときの口腔ケアの意義は以下の7つです。

   ①「生への思い」への支援
   ②自己決定への支援
   ③自立支援
   ④前向きに生きるための支援
   ⑤家族へのグリーフケア
   ⑥残された時間が短い患者と家族の最後の会話への支援
   ⑦家族の介護負担や介護疲れ軽減への支援

口腔ケアは社会福祉の立場からの援助を通して、「生活者」としての問題を解決し、「よりよい人生」を支援するツールの1つとなりました。
 
研究業績
1999-1 2001-6.10 2002-12.18 2004-30 2005-33 2007-44 2010-58 2011-65 2012-74 2014-82.84

・ (2)口腔ケアにおける多職種連携の研究

口腔ケアのボランティアを通して、「看護師からの信頼を得るためにはどうするべきか」と常に考えながら行動していました。また、研究として、効果的な口腔ケアを病院や福祉施設に導入するために看護師および介護職が抱える問題点を明らかにし、歯科衛生士が病棟に介入することで看護師の口腔ケアに対する認識がどのように変わるのかという検討を行ってきました。

研究業績:2012-70.73.75 2013-78 2015-90.91

・ (3)歯科衛生士養成校における教育改善

新潟大学歯学部口腔生命福祉学科は、日本で初めて歯科衛生士の4年生教育を始めました。また、歯科衛生士と社会福祉士の資格取得を卒業要件していることから、教育内容がどのようにあるべきなのかという検討を進めてきました。
また、2007年度より、母校である大阪歯科大学歯科衛生士専門学校の歯科衛生士臨床実習の教育効果を高めるために、学生への質的研究を行い基礎実習や臨床実習の連続性に配慮した教育改善を進めてきました。しかし、教育改善後も面接調査時に臨床実習への不安が多く語られたため、継続的に心理検査を実施することで、臨床実習における不安の変化と性格および問題のコーピング特性との関連を検討してきました。2016年度からは今までの研究結果を踏まえ、学生の不安に対する心理的な介入を行うことで、臨床実習効果を高めるための研究を進めています。

研究業績
2004-28 2009-50 2010-56.57.60.62 2011-64.68.67 2012-76 2014-85 2015-92 2016-96

研究助成金

・ 日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究(B) 2019年~2022年度

「社会参加」を促進する地域づくりの課題と主観的・客観的意義

研究代表者

隅田好美(大阪府立大学人間社会システム科学研究科 教授)

分担研究者

黒田研二(関西大学人間健康学部 教授)

小林正治(新潟大学大学院医歯学総合研究科組織再建口腔外科学分野 教授)

朝井政治(大分大学福祉健康科学部 教授)

宮崎伊久子(大分大学福祉健康科学部 准教授)

浅海靖恵(大分大学福祉健康科学部 准教授)

田中健一朗(大分大学福祉健康科学部 助教)

頭山高子(大阪歯科大学医療保健学部 准教授)

木村有子(昭和大学保健医療学部 講師)

柴田由美(昭和大学保健医療学部 講師)

本研究は、3つの研究より成り立っている。研究1は政令都市、中核都市、限界集落での第7期介護保険事業の追跡調査であり、小学校区ごとの比較、2市1村の比較、介入前後の比較を行う。研究2は自主的に健康管理を行っているフィットネスクラブ会員への追跡調査であり、研究1と比較する。研究3は口腔機能障害がある人の社会参加と要介護のリスクの関係を明確にする調査である。また、全研究を通して「社会参加」と「主観的幸福感」の関連を明らかにすることで、「自分らしく生きる」ことにつながる地域づくりへの提言を行う。

 

 

・ 日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究(C) 2016年~2018年度

口腔がん患者のアイデンティティの再構築をめざして―QOLの変化と要因の明確化―

研究代表者 隅田好美(大分大学大学院福祉社会科学研究科 教授)
共同研究者 小林正治(新潟大学大学院医歯学総合研究科組織再建口腔外科学分野 教授)

口腔がんの手術による顔貌の変形や構音障害などにより、アイデンティティが崩壊した患者への「アイデンティティの再構築」に向けた心理・社会的支援が必要である。本研究は質的研究を通して、口腔がん患者のアイデンティティの崩壊・再構築のプロセスと関連要因を明確にすることを目的とする。

・ 勇美記念財団研究助成 障害者の在宅医療の調査・研究 2015年

「口腔がん患者への生活支援体制の構築 ―質的研究による心理社会的問題点の明確化―」

研究代表者 隅田好美(大分大学大学院福祉社会科学研究科)
共同研究者 小林正治(新潟大学医歯学総合研究科組織再建口腔外科学分野 教授)
      小島 拓(新潟大学医歯学総合研究科組織再建口腔外科学分野 助教)
      山原幹正 (敷戸グリーン歯科 院長)

本研究は質的研究により、口腔がん患者の告知後から手術後までの心理社会的苦痛の変化および生活上の問題点を詳細に明らかにした。さらに、多職種による包括的・継続的な心理社会的支援、生活の質を向上させるための支援について検討した。特に、大学病院およびかかりつけ歯科医院の役割と連携体制の構築について検討した。

http://www.zaitakuiryo-yuumizaidan.com/data/file/data1_20161101044928.pdf

・ 日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究(C) 2010年~2012年

ALS患者の役割認識の変化―あきらめる役割、残る役割、新しい役割―

研究代表者 隅田好美(新潟大学医歯学総合研究科口腔生命福祉学分野 准教授)
連携研究者 佐々木公一(日本ALS協会 東京支部)

筋萎縮性側索硬化症患者は、病いが進行し自分でできないことが増えると、今までの価値観が崩壊し、アイデンティティが崩壊する。アイデンティティの再構築を促す重要な要因の1つとして、「家族役割」「社会的役割」がある。
本研究は患者の「役割認識」に焦点をあて、内的価値観の崩壊と価値転換、障害の否認と受容、アイデンティティの崩壊と再構築と「役割認識」の関連性を明確にすることで、専門職としての支援を検討することを目的とした。

https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-22530599/22530599seika.pdf

・ 勇美記念財団研究助成 障害者の在宅医療の調査・研究 2004年

「ALS患者における情報提供の問題点と改善方法」

研究代表者 隅田好美(新潟大学歯学部口腔生命福祉学科 助教授)
共同研究者 黒田研二(大阪府立大学社会福祉学部 教授)
      吉岡克彦(日本ALS協会近畿ブロック)
      久住純司(日本ALS協会近畿ブロック)

筋萎縮性側索硬化症(以下「ALS」)は治療法がない進行性の病気である。ALSと知った患者のショックは大きく、精神的サポートを告知直後から行うことは大切であり、患者自身が自分らしく生きていくための支援、人工呼吸器装着を自己決定するための支援も初期の段階から行う必要がある。本研究の目的は、ALS患者が自分らしく生きていくために必要な支援について、患者自身の立場から明らかにすることである。患者本人と共同研究を行うことで、患者の視点から現在の問題点、問題の原因、その対応策について検討し、専門職が考えている支援と、患者が求めている支援の認識のズレを明らかにした。

http://www.zaitakuiryo-yuumizaidan.com/data/file/data2_20130122022136.pdf

・ 日本生命財団 高齢社会福祉実践的研究助成 2002年~2,003年

「自立支援の観点からみた家事援助の意義と課題―訪問介護における家事援助サービス利用者の生活実態調査―」

研究代表者 佐瀬美恵子(大阪府立看護大学 講師)
共同研究者 八田和子 (大阪健康福祉短期大学 講師)
      藤井博志 (大阪府立大学 講師)
      隅田好美 (大阪府立大学大学院後期博士課程)
      荻田藍子 (兵庫県社会福祉協議会 兵庫県ホームヘルパー事業者協議会事務局)
      佐藤寿一 (宝塚市社会福祉協議会 事務局長次長)
      庄司孝代 (宝塚市社会福祉協議会 サービス提供責任者)
      堀尾厚子 (宝塚市社会福祉協議会 介護支援専門員)

われわれは、介護保険制度導入直前の1999年3月に介護保険制度では自立認定されると予想された家事援助サービス利用者を調査し、その結果、家事援助サービスが虚弱高齢者の生活を支えている実態を確認した。しかし、介護保険制度の訪問介護サービスでは身体介護サービスに重点が置かれ、家事援助サービスは軽視されがちである。そこで、家事援助サービスが高齢者の自立支援にいかなる意味を持つものであるのかを探求することを目的に研究を行った。